前回は上顎前突(出っ歯)の原因や弊害について書きました。下顎前突(反対咬合、受け口)同様、見た目だけの弊害ではなく、開口による口腔内乾燥からくる唾液の自浄効果低下、そしてそこからつながる齲蝕(虫歯)、歯周病リスクまでご紹介しました。また、前歯で噛めないことからくる大臼歯(奥歯)にかかる負担リスクについてはなかなか知られていない問題かもしれません。
今回はこれに対して子供のうちに治療することのメリットについて少し書いてみようと思います。
上顎前突の原因の一つ、舌癖からくる場合をまず考えてみましょう。舌の力により上顎前突になっている場合は、たとえ歯並びを治しても舌癖自体を改善しなくてはまた元の状態に戻ってしまいます(後戻り)。できる限り早い段階に治療した方が、原因となっている「癖」を一緒に改善していくことが出来ます。これは指しゃぶりによる上顎前突にも言えることですが、変な癖が身体に染み付く前に改善していきたいですね。
次に骨格性の上顎前突に関してです。上顎と下顎の骨のサイズの違いや位置のずれによるものです。これに関してはヘッドギアなど様々なアプローチがありますが、キーになっているのは骨の成長がまだ止まっていないという点です。子供のうちに治療を開始できれば、成長の進み具合を手助け(骨の成長を促したり、逆に抑制したり)して、上下のアンバランスを整えながら歯並びを改善していくことが出来ます。大人になって骨の成長が止まってしまっている場合、顎の成長を促しながらの治療が出来なくなってしまい、外科的なアプローチや抜歯が必要になるケースが増えてきます。
もちろん大人の上顎前突治療は必ずしも外科手術が必要になるわけではありませんが、今回は子供のうちに上顎前突の矯正治療を受けるメリットを簡単にご紹介しました。その患者さんにとってベストなタイミングで矯正治療を提供出来ればと考えています。
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